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重症肺炎や髄膜炎を起こす肺炎球菌〜新生児と高齢者はワクチン接種をお勧めします〜
  • 2020/11/06
  • 予防接種・健康診断について

肺炎球菌ワクチン>



65歳以上の方と新生児の方は肺炎球菌ワクチンを接種した方が良いと思います。
肺炎球菌にかかったとしても抗生物質という薬がありますが、かからないことが一番良い治療法だからです。
そして2種類あるワクチンをどのように選ぶか、どういうタイミングで打つかが重要になってきます。
 

目次

1. 鼻の中には肺炎球菌がいる?
2. 肺炎球菌はめちゃめちゃ強いバリアーを持っている
3. 強くて狭いプレベナーと弱くて広いニューモバックス
4. プレベナーとニューモバックスの違い
5. 二つのワクチンをどちらも打つという方法について
6. 千葉市では肺炎球菌ワクチンの助成対象が広がりました
7.まとめ
 

<鼻の中には肺炎球菌がいる?>



もともと肺炎球菌は鼻咽腔に存在するため(乳幼児では2人に1人、高齢者では20人に1人ほどの割合)、ちょっとしたきっかけで血液内に侵入します。血液に入ってきた肺炎球菌は髄膜炎や菌血症を伴う重症肺炎を起こします。


入院が必要になった成人肺炎の26%はこの肺炎球菌が原因で、その死亡率は6.4%だったという報告があります。(埼玉県立循環器・呼吸器病センター呼吸器内科 高柳昇先生の2006年の論文より)


また細菌性髄膜炎にかかった6歳から49歳までの患者さんの60〜70%が肺炎球菌が原因だったという報告もあります。細菌性髄膜炎は年間発症が1500人くらいですが、成人の死亡率20%で、約30%の人に後遺症を残す恐ろしい疾患です。
 

<肺炎球菌はめちゃめちゃ強いバリアーを持ってる>


肺炎球菌は莢膜(きょうまく)という非常に強力なバリアーを持っています。そのバリアーで本体を守っているので通常ヒトが持っている白血球などの菌を殺す力が届きません。
 

この莢膜を破壊するために人間には抗体という免疫システムがあります。肺炎球菌に対する抗体はこの厄介な莢膜に取りつき免疫システムを稼働させます。
若い人にはこの抗体が十分に備わっています。
抗体が少ないのは新生児と高齢者です。
 

新生児は肺炎球菌が、鼻腔内から血液の中に入ってきてもまだ抗体がないので容易に肺炎球菌に侵略されてしまいます。


また、高齢者は抗体を作るシステムが弱ってきているので徐々に抗体が失われていきます。
 
そこで抗体を増やすためにワクチンが必要になります。
 

<強くて狭いプレベナーと弱くて広いニューモバックス>


肺炎球菌は莢膜の違いにより93種の血清型に分類されていて、重篤化を予防するために複数の血清型を含むワクチンが用意されています。
その一つがプレベナーで、もう一つがニューモバックスです。
プレベナーは小児用と成人用があります。13種類の血清型を含んでいます。
ニューモバックスは23種類の血清型を含んでいます。
 
新生児に肺炎球菌ワクチン(プレベナー)を打つとこの13種類の肺炎球菌による髄膜炎が推計70%減りました。

高齢者にも肺炎球菌ワクチンを打ち抗体を増やすことで肺炎球菌による肺炎が減ってきました。
 

<プレベナーとニューモバックスの違い>


● 力は弱いけれども23種類カバーしているニューモバックスというワクチン

● 力は強いけれども13種類しかカバーしていないプレベナーというワクチン
 
力が弱いニューモバックス(イメージ図)

ニューモバックスは23種類の血清型を含んでいますが、抗体が5年ほどで減ってくるので5年ごとに追加接種をした方が良いと考えられています。

 
力の強いプレベナー(イメージ図)

プレベナーは13種類の血清型を含んでいます。(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、23F)
ニューモバックスは23種類の血清型を含んでいます。(血清型1,2,3,4,5,6B,7F,8,9N,9V, 10A,11A,12F,14,15B,17F,18C,19F,20,22F, 23F,33F)
 
プレベナーの血清型はニューモバックスにほとんど全て含まれていると考えられます。(6Aと6Bはお互いに効果があるため)
それならば、プレベナーは13種類しかカバーしないので別に打たなくても良いのではないかと思われるかもしれませんが、プレベナーは抗体を作る力がとても強く、1回打つと生涯抗体が残るので2回打つ必要はないとされています。


そして、プレベナーは新生児に打っても抗体ができます。(ニューモバックスを打っても新生児には抗体が十分に作れないので新生児には打ちません。)
ただし、プレベナーはカバーする血清型が少ないため現在は任意接種になっています。
現在のところ公費で助成してもらえるのはニューモバックス1回だけとなっています。プレベナーは公費助成がありません。
 

 <二つのワクチンをどちらも打つという方法について>


どちらのワクチンも一長一短があります。
であれば、二つとも打った方が良いのではないかという考えになります。
 
現在の考え方(日本感染症学会/日本呼吸器学会合同委員会)を以下に示します。
https://www.jrs.or.jp/uploads/uploads/files/guidelines/haien_kangae2019.pdf
 
(A)ニューモバックス 
(B)プレベナー
とします。
 
現在まで肺炎球菌ワクチンを未接種の方のうち、
65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳の方は公費助成が受けられるので以下の2つのスケジュールが推奨されます。
 
● (A)→5年→(A)→5年→(A)
 
● (A)→1年→(B)→4年→(A)→5年→(A)  
 
上記の年齢以外の場合は公費助成が受けられないので以下の2通りのスケジュールが推奨されています。
 
● (A)→5年→(A)→5年→(A)
 
● (B)→1年→(A)→5年→(A)
 
 
現在のワクチンの効果が出て、23種類の肺炎球菌が衰退していくと、23種類以外のタイプの肺炎球菌が流行するようになる可能性があります。なるべく早く、すべての種類の肺炎球菌に対するワクチン(93価)が作られるよう切望します。
 

<千葉市では肺炎球菌ワクチンの助成対象が広がりました>


令和2年度は新型コロナ感染症も流行しているため、少しでも肺炎になるリスクを減らそうと千葉市では肺炎球菌ワクチンの定期接種以外の助成が行われます。
 
○千葉市独自の助成事業の対象者
● 令和2年度中に76歳以上になる方のうち、定期接種の対象者以外の方。
●  接種日時点で65歳以上の者であって、心臓、じん臓、呼吸器機能、ヒト免疫不全ウイルスにより免疫機能に、1級相当の障害のある方のうち、定期接種対象外の方
※過去に一度でも肺炎球菌ワクチンの予防接種を受けたことのある方は残念ながら対象ではなくなります。
詳しくは千葉市のホームページをご覧ください。
https://www.city.chiba.jp/hokenfukushi/iryoeisei/hokenjo/kansensho/elderly_pneumonia.html

まとめ

肺炎球菌は髄膜炎や重症肺炎を引き起こす可能性のある恐ろしい細菌です。65歳以上の方と新生児の方は是非肺炎球菌ワクチンを接種してくださいね。


 

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