
ピロリ菌は1979年にオーストラリアで発見されました。
ピロリ菌は酸性の胃の中で塩基性のアンモニアを産生し、酸を中和して生き残ります。
これは大変な発見でした。
〜ピロリ菌は胃の中で何をしているの?〜
ピロリ菌は胃の粘膜に炎症を起こして胃炎を起こします。そして胃炎が治った後再び胃炎になったりしているうちに胃潰瘍を作ってしまいます。
他には、胃潰瘍よりも頻度は低いのですが胃がんが発生します。
ピロリ菌を除菌しないまま10年間放置しておくと2.9%の方が胃がんになります。(Uemura N et al ; N Engl J Med. 2001 Sep 13;345(11):784-9.)
ピロリ菌を除菌をすると胃がんになる確率が減りますが、ゼロにはなりません。
どうしてでしょうか。
それは除菌した時にごくごくわずかの胃がんがすでにできている場合があるからです。
当院でもピロリ菌を除菌して安心していたら、3年後に胃がんが見つかった方がいました。
ピロリ菌に長い期間感染されていると胃の粘膜は萎縮してきます。これを萎縮性胃炎といいます。
萎縮性胃炎になると非常に胃がんになりやすい状態になります。
逆に言えば萎縮性胃炎になる前(胃の粘膜がまだ元気な状態)にピロリ菌を除菌をすると胃がんにはなりません。
方法は抗生物質を2種類、強力な胃薬を1種類1週間飲むことで除菌されます。
〜若い人たちへ〜

40歳未満の方々は積極的にピロリ菌の検査を受けることをお勧めします。
なぜならピロリ菌がいた時、早めに除菌するべきだからです。
そのことがわかっているので数年前から20歳以上の若者を対象にピロリ菌検診が始まっています。
千葉市では20歳〜39歳の方は500円でピロリ菌検診(胃がんリスク検査)が受けられます。
ちなみに高槻市、厚木市などいくつかの自治体では中学2年生を対象にピロリ菌検査を行ったところ約5%の生徒にピロリ菌が見つかり、ほぼ除菌することに成功しています。
この検査を受けた生徒たちは今後胃がんにかかる可能性がほぼなくなったと言えます。
このようなことはもっと行政は説明すべきなのでしょうが、広報活動が不十分です。
こういう説明をするのが一番上手なのはテレビだと思うので、テレビに頑張ってもらいたいですね。
でも、最近の20歳代はあんまりテレビを見ないかもしれませんが…

〜ピロリ菌の除菌が必要かどうかを調べるにはどうすれば良い?〜
①保険を使った検査
胃カメラで確認する。この方法は確実かつ正確です。
②自費で行う検査
採血で確認する。(ペプシノーゲン法とピロリ菌抗体)
現在多くの医療機関で自費診療(=保険適応外)という形で検査をしています。
胃の粘膜の萎縮の有無とピロリ菌の有無を調べることにより、胃カメラをしないでピロリ菌の存在と胃がんのなりやすさを調べることができます。
〜自費で検査をしてピロリ菌が見つかった時〜

②の結果によりピロリ菌が見つかっても除菌も保険適応外になりますので自費で除菌することになります。
一次除菌成功率は92%(武田薬品調べ)ありますが、残念ながら一次除菌に不成功だった場合は2次除菌に進みます。
薬は変わりますが、同様に自費治療です。
これまた不成功の場合3次除菌へ。
ここまでくると胃カメラをやって保険適応にしておけばよかったと思われるかもしれません…。
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費用 |
ピロリ菌検査 |
5,150円 |
一次除菌 |
15,000円 |
二次除菌 |
15,000円 |
(2019年5月現在)
余談ですが、胃カメラも鼻から行えばそれほど苦痛ではありませんよ。
私も体験済みです。
鼻から胃カメラ体験記の記事はこちら
〜まとめ〜
若い人はピロリ菌の検査を受けましょう。
また、50歳を過ぎてピロリ菌がいたら除菌をした上で、毎年胃カメラの検査をした方が良いでしょう。
ピロリ菌は早めに除菌することが大事です。
胃がんを防ぐためにも、検査は積極的に受けていきましょう。
稲毛区 小中台クリニック
院長 池田雄次