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乳幼児の風邪、侮るべからず!〜RSウイルスの危険性〜
  • 2021/08/13
  • 小児科の症状
 RSウイルスは風邪の原因ウイルスの1つです。
たいていはRSウイルスに罹患しても風邪症状が出てくるだけでいずれ治っていきます。

 ただし、乳児や高齢者において肺炎や細気管支炎を起こして重症化する場合があるので注意が必要です。
 

疫学

 2020年はRSウイルスが全く流行しませんでした。これはコロナ対策のためではないかと思います。ところが、2021年になりRSウイルスは大流行しています。昨年流行しなかったため本来抗体を持つはずの 1〜2歳児などが抗体を作れなかったため、罹患する可能性のあるお子さんが急増したのではないでしょうか。



 2021年7月現在、夏場にもかかわらずRSウイルスが大流行しています。非常に多くのお子さんが罹患するRSウイルスがどの程度危険であるのか実態調査が2014〜2016年に行われました。404施設から報告されたRSに罹患した患児の総数は71466例で、そのうち重症例が5727例(8%)、死亡例は18例(0.025%)でした。
 

症状

 通常潜伏期間が4〜6日間で、発症すると発熱や咳、鼻水、くしゃみ、食欲不振、喘鳴など感冒様症状が出てきます。これらの症状は一度に出るのではなく順次出てきます。他の感染症と区別することができる特徴的な症状はありません。
 また、乳児では唯一の症状が活動低下や呼吸困難である場合もあります。
 

 多くの乳幼児の場合、1〜2週間で症状は改善します。ただの風邪となんら変わりはありません。ただし、一部の患者さんに細気管支炎もしくは肺炎が起きてしまいます。特に以下のお子さんは重度のRSV感染症になりやすいので注意が必要です。
● 未熟児
● 6ヵ月未満の乳児
● 心臓や肺に基礎疾患のある2歳未満の幼児
● 免疫異常のある乳幼児
● 嚥下障害のある乳幼児
 
 

治療法

 RSウイルスに罹患しても風邪症状のみであれば症状に合わせた治療で十分です。抗ウイルス薬などの根本的な治療はいまだに開発されていません。(2021年7月現在)
 発熱にはアセトアミノフェンかイブプロフェンを投与します。(※小児の場合、脳に障害が起こる「ライ症候群」になる可能性があるため市販薬のアスピリン含有の薬は使わないでください。)
 また、水分摂取が大切です。水分が摂れなくなると一気に脱水になり全身状態が悪化するので、しっかり摂りましょう。



 咳が強く出る場合があり、喘鳴(ヒューヒューとかピーピーという音)が聞こえてくるようであれば、細気管支炎と喘息を合併して起こしている可能性があります。この場合は喘息の治療も行います。


 さらに呼吸状態が悪化した場合は入院して自分の免疫力でRSウイルスを駆逐するまで酸素吸入や点滴投与が必要になります。


 
 

予防法

 大人は風邪をひいている時はRSウイルスに罹患しているかもしれないので、感染リスクの高い子どもに接するべきではありません。しかし、親が子どもに接しないでいるのは困難な場合が多いので、以下のことを励行しましょう。


● 咳やくしゃみを手ではなくティッシュやシャツの袖で覆ったりマスクを着ける
● なるべく頻繁に、石鹸と水で20秒間、手を洗う
● キスをしたり、触ったり、コップやスプーンを共有したりするなど、密接な接触は避ける
● テーブルやドアノブなど、頻繁に触れる表面を清掃する
 


 予防のためのワクチン開発は続けられていますが、過去に製造された不活化ワクチンで、接種者が非接種者よりも重症になるという失敗もあり、依然として研究中です。


 ワクチンの開発がなかなか進まない中、抗体を注射で投与するタイプの予防薬が出てきました。それがパリビズマブ(シナジス注)です。


 

パリビズマブの効能

 RSウイルス感染は下記の新生児、乳児および幼児に重篤な下気道疾患を引き起こします。パリビズマブを投与することによりこれらの重篤な疾患を予防できます。
 下記の条件に適応する場合は月に1回注射を打つことになります。
 
RSウイルス感染流行初期において、
● 在胎期間28週以下の早産で、12ヵ月齢以下の新生児および乳児
● 在胎期間29週~35週の早産で、6ヵ月齢以下の新生児および乳児
● 過去6ヵ月以内に気管支肺異形成症(BPD)の治療を受けた24ヵ月齢以下の新生児、乳児および幼児
● 24ヵ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)の新生児、乳児および幼児
● 24ヵ月齢以下の免疫不全を伴う新生児、乳児および幼児
● 24ヵ月齢以下のダウン症候群の新生児、乳児および幼児
 
 リスクの高い乳幼児はウイルス感染流行期に半年間ほど、毎月パリビズマブの投与をした方が良いと思われます。
 

大人のRSウイルス感染症

 乳幼児の病気と考えられがちなRSウイルス感染症ですが、実は大人にも重度の感染を起こす場合があります。米国では毎年、177,000人以上の高齢者が入院し、そのうち14,000人がRSV感染により死亡していると推定されています。(CDCのHPより)以下の大人は重度のRSV感染のリスクが高くなります。
 
● 高齢者、特に65歳以上
● 慢性心臓病または肺疾患のある場合
● 免疫力が低下している場合
 
 日本では、RSウイルス関連肺炎は肺炎全体の約6%に認められ、死亡退院率はRSウイルス関連肺炎のうち6.5%だったと報告されています。(坂総合病院の高橋洋先生のご報告)
 

まとめ

 1歳未満のお子さんはリスクが高いので、RSに罹患した場合はよく観察してください。
 熱が高く、呼吸が苦しい感じがあったり、ヒューヒューした音が聞こえて来るようなら細気管支炎や肺炎を起こしている可能性があるのでかかりつけの小児科を受診してください。
 また、高齢者にうつっても肺炎を引き起こす場合があるのでRSウイルスに罹患している時は、高齢の方に近づかないように気を配っていただけたらと思います。
 一般的予防対策としてはマスク着用と手洗いが重要なので是非心がけてください。

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