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花粉症が楽になる治療があるってほんと?〜アレルゲン免疫療法〜
  • 2020/03/09
  • 内科の症状,小児科の症状
スギ花粉症を有する人の割合は29.5%で国民病と言われています。1998年から2008年の10年間で10%ほど有病率が上昇しました。(2008年の全国疫学調査)
 
スギ花粉症は通常の治療法では2%しか治癒しないのですが、アレルゲン免疫療法で治療すると約80%の人が軽減もしくは治癒します。今までは皮下注射による治療法が基本で特殊な医療機関でしか出来なかったのですが、数年前から舌下免疫療法によりクリニックでも治療が可能になりました。

スギ花粉



1950年、太平洋戦争後の木材不足を補うために成長の早い杉の植林が日本の国策としてすすめられました。その杉も植えられてから40年以上の月日が経ち伐採の時期を迎えました。しかし、外国の安い木材に圧倒されて杉は伐採されないまま残っています。残された杉は2月から4月にかけて日本中に花粉を放出しています。

スギ花粉症ってなに?


スギ花粉に対するアレルギーが体の中で完成するとスギ花粉症になります。
 
①スギに対してIgE抗体という抗体が体の中で作成
② IgE抗体にスギ花粉が接触し、肥満細胞と呼ばれる細胞に結合
③肥満細胞が結合により刺激を受け、ヒスタミンやロイコトリエンという物質を放出
④鼻水や鼻づまり、目の痒みなど花粉症を引き起こす
 
スギには主に太平洋側に生息する表杉、日本海側に生息する裏杉があります。性質がやや異なりますが、どちらも花粉症を引き起こします。
 

何歳くらいで花粉症になるの?


果たして何歳から花粉症になるのでしょうか
牛乳や小麦などに対するアレルギーは1歳ごろピークに徐々に弱まってくるのですが、スギ花粉症に関しては明らかに後天性です。最年少陽性例は1歳8ヶ月との報告があります。(アレルギー外来受診幼児におけるスギ花粉感作状況と幼児スギ花粉症の臨床的検討;増田 佐和子先生)
 
学童期のスギ花粉症の割合は5.2%で学年と共にその有病率は上昇しました。(大規模疫学調査からみた学童期スギ花粉症の実態;楠隆先生)
 
1992, 2002, 2012年のスギ花粉症の小学生の有症率は,3.6, 5.7, 9.9%でした.(西日本小学児童におけるアレルギー疾患有症率調査―1992, 2002, 2012年の比較―;西間 三馨先生)

このように、年齢が上がるとともに花粉症発症率が高くなることや、近年花粉症有病率が高くなっていることがわかります。

歳をとれば花粉症は治るの?


花粉症を持ってる方の割合は20歳代から50歳代までほぼ横ばいです。60歳代になり急に割合が減ります。

3シーズン以上スギ花粉症になった人で、3シーズン以上症状がなくなった人を「スギ花粉症が治った」と定義した論文があり、それによると、スギ花粉症が自然に治るのは約2%です。(獨協医大 馬場廣太郎先生 耳鼻 37:1187〜1191,1991)

花粉症はどのように治るのか


アレルギー反応には感作(かんさ)と減感作(げんかんさ)というシステムがあります。

● 感作とはアレルゲンが体に入ってきたときに反応して抗体を作ることです。
● 減感作というのはアレルギーの元(例えば花粉など)に対して徐々にに反応しなくなるシステムです。
 
感作により、一度出来た抗体は次に同じアレルギーの元が体に入ってくるとアレルギー反応を起こします。
その後、減感作により体が花粉に慣れます。そのため、アレルゲンが体に入ってきても抗体が働かなくなり、その結果ヒスタミンが放出されず、鼻水、鼻づまり、目の痒み、皮膚の痒みが出なくなります。
 
減感作が起きると花粉症は治ります。しかし、上記のように簡単にはこの減感作は起きないことが分かっています。
そこでこの減感作を薬で起こしやすくする治療が数年前から登場しました。

花粉症の免疫療法



スギ花粉を舌下に落としてこの免疫の減感作を起こさせます。(ラムネのように溶けます)
 
スギ花粉を大量に投与するとショックを起こす危険性があるので、最初は薄い濃度で開始します。以前は注射で投与して少しずつアレルゲンの量を増やしていきましたが、現在の舌下療法(シダキュア)では薄い濃度のものと濃い濃度のものの2段階だけになりました。


スギ花粉飛散時期は新たに投与を開始出来ません。(スギ花粉飛散時期はスギ花粉アレルゲンに対する患者の過敏性が高まっている場合が多いため。)
5月〜11月のいずれかの時期から投与開始となります。その後はスギのシーズンも含めて継続します。
 
治療の手順は次のようになります。

1. 最初に濃度の薄い薬を舌下に落とす時はクリニックで30分ほど観察が必要です。30分経過してじんましんも血圧の低下もなければ問題ありません。
2. 1回目が問題なければ2回目以降は自宅で行います。
3. 舌の根元に薬を落として1分ほど保持してから薬を飲みます。その後5分間はうがいや飲食をしないように気をつけてください。
4. 1週間後に薬を増量します。
5. 増量後は同じ量で継続します。
 
※初回にはスギ花粉などに対する抗体の有無を調べるため、採血が必要です。(採血で調べないと、原因がスギ花粉ではないアレルギー性鼻炎だった場合に舌下治療は無駄な治療となる可能性があります。)
※採血の結果治療が必要な場合、最初の投薬は1週間分なので1週間後に来院していただきます。その後は1ヶ月ごと通院となります。(オンライン診療可能)
※効果が最初の花粉症のシーズンで認められた場合は3年間継続します。(2年以下に比べて3年継続の場合、長期に持続する効果が認められたため)
 

2005年のデータでは、皮下注射によるアレルゲン免疫療法で治療した人のうち28%は治癒し、全体の80%程度は症状が軽減しました。(平成22年度厚生省長期慢性疾患総合研究事業)

舌下治療と特殊な医療機関で行なっている皮下注射は治療方法の違いがありますが、臨床試験ではこの二つの投与方法には効果がほとんど変わらないので同様の効果が期待できると思われます。

まとめ


通常の対症療法では2%しか治癒しないスギ花粉症ですが、アレルゲン免疫療法で治療すると28%治癒し、50%程度の人の症状が軽減しています。試してみる価値があると思われます。

  (2020.3.15.加筆修正)
 

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