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油断大敵!夏に増える伝染性膿痂疹
  • 2020/06/23
  • 内科の症状,小児科の症状,皮膚科について
夏になると子どもたちの体にジュクジュクした発疹が出てくる場合があります。
水泡が破けて赤くなりその周辺にも同じ様な発疹が広がります。



火事の火の粉が飛び火する様に似ているため、「とびひ」と呼ばれているようです。正式には「伝染性膿痂疹」と言います。

伝染性膿痂疹の原因


汗をかいたり、アトピー性皮膚炎があると痒くてひっかき傷を作ってしまいます。子どもたちの皮膚は大人に比べると薄いので、ひっかき傷から細菌の侵入を容易に許してしまいます。原因菌の98%は黄色ブドウ球菌です。残りの2%は溶血性連鎖球菌です。(赤穂市民病院 11年間における伝染性膿痂疹308例の統計)

伝染性膿痂疹には2種類のタイプがあります。
水疱性膿痂疹と痂皮性膿痂疹です。

(1)水疱性膿痂疹

黄色ブドウ球菌が原因で、この菌が産生する表皮剥脱毒素(exfoliative toxin、ET)という毒素が皮膚を壊して起きます。この毒素が原因で皮膚に水疱ができます。その水疱が破れたところをひっかいてしまい、指と爪についたブドウ球菌をほかの傷のところにひっかいて塗り込むのです。

飛び火状態になり始めると最初の皮疹の近くにしか伝染していなかったのに徐々に体の遠くの部分に伝染するようになります。

        皮膚が剥がれるイメージ図

悪化するとブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群=SSSS (staphylococcal scalded skin syndrome)と略される皮膚が剥離してしまう重篤な状態になる場合があります。
膿痂疹といえども油断はできません。

黄色ブドウ球菌には二種類のタイプがあります。
MSSAとMRSAです。
この二種類の菌は抗生物質の効果が異なり、その違いは治療方針に影響します。
MSSAは抗生物質がよく効きますが、MRSAは抗生物質があまり効きません。
黄色ブドウ球菌全体におけるMRSAの割合はおよそ30%というデータがあります。(広島大 菅井基行先生の調査2002年)
つまり、MRSAへの対策が伝染性膿痂疹の治療では重要になってきます。

(2)痂皮性膿痂疹


これは溶血性連鎖球菌により起きるとびひです。アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚に起きる場合があります。カサブタが沢山できるタイプの膿痂疹で水疱はできませんが、圧迫によって膿汁が出てくる場合があります。
そのまま放置しておくと血液中に溶連菌が入って敗血症(菌血症)という状態になる時がありますので要注意です。

溶血性連鎖球菌は略して溶連菌とも呼ばれています。この菌は現在抗生物質が非常に効きやすいのですが、まれに耐性菌がいます。その点だけ心に留めておいていた方がよいと思います。

伝染性膿痂疹の治療

治療薬には塗り薬と飲み薬があります。
局所に病変が限定されているときは塗り薬だけでも効果があると思います。また、飲み薬が苦手なお子さんや新生児には塗り薬だけで治療を開始する場合もあります。ただし、広範囲に病変が広がった場合には飲み薬が必要です。

①塗り薬

<抗生物質の軟膏>


<亜鉛華単軟膏>
この塗り薬は抗菌薬ではありませんが、皮膚の状態がジュクジュクしているときは効果があります。ジュクジュクを乾燥させる薬です。抗菌薬の外用に加えて重ね塗りをします。
添付文書上の薬効薬理には「酸化亜鉛は局所収れん作用、保護作用及び軽度の防腐作用を有し、炎症皮膚面において、炎症を抑え、組織修復を促進させる。また、本品は痂皮を軟化させ、湿潤面を乾燥化させる。」との記載があります。

<イソジン液>
強力な殺菌効果を持っています。ただし、その効果をきちんと発揮するにはイソジンを綿棒などで塗った後少なくとも120秒待つ必要があります。
(Bactericidal Activity of Antiseptics Against Methicillin-Resistant Staphylococcus Aureus C E Haley et al.)
なお、クロルヘキシジングルコン酸塩(ヒビテン)という消毒薬は粘膜に使うとアナフィラキシーショックを起こす場合があるので原則として水疱性膿痂疹には使いにくい薬です。

②飲み薬

<経口抗菌薬>
病変が局所にとどまらず広がり始めた場合は経口抗菌薬で体の内側から殺菌する必要があります。伝染性膿痂疹の原因である黄色ブドウ球菌には
ペニシリン系の薬剤があまり効きません。薬剤感受性(薬が効くかどうか実験室でチェックしたもの)は20%程度です。
セフェム系の抗生物質は70〜80%の割合で黄色ブドウ球菌に効果があります。
残りの20%強の場合にはセフェム系の薬が効かないのでMRSAと考えられます。
MRSAに効果が高いのは以下の薬です。


MRSAの伝染性膿痂疹では小児の患者さんがほとんどであるのに、小児に使えない薬が多いのは問題です。新生児でまともに使えるのはホスミシンと塗り薬しかありません。
伝染性膿痂疹の年齢分布は0歳〜8歳までがほとんどです。(赤穂市民病院の統計) 
選択肢が少ないので、治療がうまくいかない場合もあるかもしれません。塗り薬との併用が必要になる時もあるかと思います。

まとめ


伝染性膿痂疹(とびひ)は夏場になると増加します。発症するのはほとんどが8歳未満のお子さんです。体を丁寧に洗っても改善せず、むしろ発疹の数がだんだん増えてくるようなら医療機関の受診をおすすめします。

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