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痰の出ない咳と高熱がある場合はご注意を!〜マイコプラズマ肺炎〜
  • 2019/10/24
  • 肺年齢について
「先日マイコプラズマ肺炎のお子さんと一緒に遊んだのでうつったんじゃないかと心配なんです。」
「いつ頃一緒に遊んだのですか?」
「5日前です。」
マイコプラズマの潜伏期間は2〜3週間ほどで割とゆっくりに発症しますので5日間で発症することはありません。まだ心配は不要ですが熱が上がらないか注意する必要があります。

マイコプラズマ肺炎の特徴

マイコプラズマ肺炎には以下のような特徴があります。
1.咳が長引く
2.高熱が出る
3.胸部レントゲンですりガラス様陰影
4.若い人に多い。
5.痰があまり出ない。
6.呼吸の音から肺炎を疑えない
7.採血による炎症反応はあまり出ない。


1.咳が長引く

咳が出ている時は気管支が炎症を起こしています。
さらに気管支の先にある肺にも炎症がある時もあります。
 
気管支が炎症を起こすマイコプラズマ肺炎の場合、咳が出やすくなります。
そして熱が下がっていても、咳が長引くことがしばしばあります。

マイコプラズマ肺炎の感染しやすい期間は「適切な抗菌薬治療を開始する前と開始後数日間」であり、「登園の目安は発熱や激しい咳が治っていること」とされています。(厚生労働省の保育所における感染症対策ガイドラインによる)
咳が最後まで残るので登園許可するのも悩ましい判断になります。https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000201596.pdf

2.高熱が出る
高熱が4日以上長引いているときは、ひどい気管支炎もしくは肺炎を疑わなければなりません。
この気管支炎と肺炎を聴診器だけでは区別出来ないので、区別するために胸部レントゲン検査が必要です。
 
3.胸部レントゲンですりガラス様陰影
気管支炎の場合はレントゲン検査で異常はありません。
肺炎の場合は胸部レントゲンに白い影が写ります。通常は片方だけにある場合が多いのですが、両側に白い影を認める場合もあります。また、すりガラスのような白い影を認める場合もあります。この白い影のことをすりガラス様陰影と言います。
 
4.若い人に多い。
マイコプラズマには比較的若い人が多く罹患します。2016年に大流行した時の岐阜県感染症かわら版によると圧倒的に小児が中心です。

上の図が示す様に小中台クリニックにおける2010年から2017年のデータにおいても20歳未満にその発症は集中しています
 
5.痰ががあまり出ない。
マイコプラズマ肺炎の特徴の一つに痰があまり出ないことが挙げられます。
下記は小中台クリニックで治療したマイコプラズマ肺炎の症状です。(2010年〜2017年)

痰は22%でしたが、発熱は80%と咳は97%でした。
 
ただし、
乳幼児のマイコプラズマ肺炎の臨床的検討
(武田 紳江, 黒崎 知道, 石和田 稔彦, 河野 陽一2008 年19 巻2 号p.137-147日本小児呼吸器疾患学会雑誌)によると、5歳以下と6歳以上で分けた時に5歳以下では湿性咳噺(痰の絡んだ咳)が90 %でしばしば多くあり、5歳以下の場合、痰の量でマイコプラズマは疑えないようです。

6.呼吸音から肺炎を疑えない。
しばしば湿性ラ音と表現されるパチパチという音が聴診器を胸に当てると聞こえてくる場合があります。一般的な肺炎を疑う所見です。
しかし、マイコプラズマ肺炎ではしばしばこの湿性ラ音が聴取されません。レントゲンで肺炎を見つけたあとにその場所を念入りに聴診しても正常の呼吸音しか聞こえない時がしばしばあります。
教科書的にも理学所見に異常を認めない(=聴診器で異常を発見できない)場合が多いとされています。
これはマイコプラズマ肺炎の診断を難しくしている要因です。
 
7.採血による炎症反応があまり上がらない。
細菌感染による炎症が体の中に起きると多くの臓器において血中の白血球数は上昇することが一般的です。しかし、マイコプラズマは細菌ではないので少し違います。
 
以下の論文によるとマイコプラズマ肺炎では85%の症例において白血球数が1万を超えることがなく、細菌による肺炎の場合は88%の症例において白血球数が1万を超えます。
Respir Med. 2004 Oct;98(10):952-60.
Is it possible to distinguish between atypical pneumonia and bacterial pneumonia?: evaluation of the guidelines for community-acquired pneumonia in Japan.
 
 

診断

上記6の特徴で示した様に胸部聴診にて呼吸音の異常を認めないことが多く、聴診をしても肺炎を疑うことができません。ですのでレントゲン検査にたどり着くには症状から肺炎を疑うしかありません。
もっとも肺炎を検出してくれるのは「4日以上の38.5℃以上の発熱」+「咳」です。発熱4日目には胸部レントゲンは撮った方が良いでしょう。
 
マイコプラズマ肺炎の診断に胸部レントゲンは必須です。
肺炎が認められたら本当にマイコプラズマかどうか確認しなければなりません。

マイコプラズマ迅速判断

マイコプラズマ迅速診断キットには咽頭ぬぐい液を使って15分ほどで判定できるものがありますが、当院ではマイコプラズマ迅速診断はマイコプラズマのIgM抗体をチェックしています。
遠心機で血液を分離する必要があり、40分ほど時間がかかりますが、診断精度が高いので採用しています。
 
もちろん肺炎の原因は多岐に渡るので、肺炎球菌の尿中抗原検査も喀痰培養検査も同時に行います。
ただし、マイコプラズマ肺炎では痰がほとんど出ませんから喀痰培養検査ができない場合が多々ありますが、喀痰培養検査は結核などを除外するために必須です。

治療

一般的に急性気管支炎などに使われるペニシリン系やセフェム系の抗生物質は細胞壁を壊して細菌を死滅させます。
ところが、マイコプラズマには細胞壁という構造がありません。そのためペニシリン系やセフェム系の抗生物質はマイコプラズマには効果がありません。細胞の中に直接効果を持つマクロライド系やテトラサイクリン系やニューキノロン系の抗生物質が効果的です。
 
かつてはマイコプラズマと診断したらマクロライド系の抗生物質を投与すれば、ほぼ100%完治していました。
ところが数年前から突然マクロライド系の抗生物質が効かなくなりました。
マクロライド耐性マイコプラズマが出現したのです。

当初は本当に焦りました。急に今までの常識が覆される事態に陥ったのです。
その後テトラサイクリンやニューキノロンを使うことで対処しました。
 
しかし、日本マイコプラズマ学会「肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針」によると抗生物質の適正使用を全国的に考えた場合、
まだマクロライド系の抗生物質が効くマイコプラズマが50%程度いることがわかりました。
そこで、第一選択はマクロライド系抗生物質を使用し、48時間で効果がないときはニューキノロンかテトラサイクリンを使うことが提唱されています。
ただし、8歳未満にはテトラサイクリンの中のミノサイクリンは歯牙黄染(歯牙が黄色に変色してしまう)という副作用があるので可能な限り使わないように注意喚起されています。

まとめ

小中学生や幼児は集団活動が多いのでマイコプラズマが流行しやすい年齢層になります。また、潜伏期間も2〜3週間と比較的長いので流行期間も長く続きます。
通常気管支炎に使われるペニシリン系やセフェム系の抗生物質を服用しているのに熱が全然下がらないときや、痰の出ない咳で高熱が4日以上続くときはマイコプラズマ肺炎かもしれません。
他の人に感染してしまう肺炎でもあるので、早めの受診をおすすめします。

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